「それ」を見、姜維は疑問で溢れた眼差しを彼に向ける。
向けられた彼、趙雲は膝の上に乗っかる青年の頭を撫でながら、姜維の瞳を見つめ返す。
「あの」
しっ、と趙雲は鋭い息を出した、しかし瞳は落ち着いた色を湛えたままであった。
「帰ってきた途端これだ」
と、膝の上の青年の額を軽くつつき、青年が唸り声を上げ、それを払い、やがて高いびきをかきだす。
「仕方ありませんよ、孟起殿新兵の将ですし」
「解っているが……」
額から離した手でそっと頭を撫でながら自室の方が落ち着くだろうに、呟く趙雲。
「しかし幸せそうですね」
軽くしゃがみ、寝顔の青年を眺めると趙雲と同じように呟く姜維。
「そうだな」
返すように手を止め、じっと彼を見つめる趙雲。
ふいに、二人の目が合い、趙雲は手を止める。
「子龍殿?」
訊ねる姜維に、趙雲はそっと馬超の頬に手を当てると、鼻に指を這わせた。
そのまま、きゅっと軽く摘む。
まさか?そう語っている瞳が真顔で鼻をつまんでいる趙雲を捕らえる。
彼は、こくりと頷き、横になっている青年を見つめた。
しばらくの間、恐ろしいほどの静けさが彼らを包み込みやがて、
「むぐ」
という間抜けな声によって裂かれる。
それは、趙雲の膝元で睡眠を摂っていた青年の物であった、彼はそのまま、身体を捩らせ、くねくねと抵抗している。
「たまにはこれぐらいしてもいいだろう」
本日初めて、ふっと笑う彼。膝元で暴れる彼をすこぶる楽しそうに眺めている。
姜維も笑みを隠せない様子で、笑い声が漏れぬよう必死に口を抑えている。
そんな彼らに挟まれた馬超は、よっぽど苦しいのか、ばたばたと手足を動かし抵抗していた。
「し、子龍殿、そろそろ…」
しばし黙って口を押えていたが、あまりに堪えかねたのだろう、姜維がそう口を開いた瞬間。
趙雲の顔の方から鈍い音が耳に届く。
文字には表し難い音は耳にするより威力があったのであろう、膝に乗せた彼を気遣う余裕もなく、寝台に沈み込む趙雲。
馬超の振り回していた手が、彼の頬に綺麗に決まったのであった。一撃を食らわした彼もまた、支えを失い床へと転がりかけるのだが、間一髪、姜維に支えられ、辛うじて激突だけは免れた。
「子龍殿!」
馬超をとりあえず床に置き、彼の元へ寄る姜維とすぐに意識のあることを口にする趙雲。
一方、目を覚ましたばかりの馬超は、現状が理解できず頭に疑問符を浮かせていたが、やがて趙雲に気付き、奇襲か!?と叫び何ともいえない微笑を返されるのであった。
20090325-ゴギャッとかメメタァとか。さりげなく膝枕。
3人で9題のお題/From:シージェイズさん
- 作品名
- 01 いじりすぎ注意(無双槍族)
- 登録日時
- 2009/03/25(水) 00:00
- 分類
- 文::ジャンルごちゃまぜ9題のお題