静寂とは、かくも突然、破られるものである。
その時も、例に漏れず。
気怠そうに書き物をしているロナードと、その横で同じく気怠そうに机に伏せるハントの元に、足音が駆け寄った。そして、
「おっさん、ロナード!どういう事だ!」
と詰め寄る。
「……は?」
伏せていた顔を上げるハント。気怠そう、というよりは半分ほど睡眠に足を突っ込んでいたらしい。
うつろな瞳で足音の主の青年を見上げた。
「お、ザードか!今日の夕飯は」
なんだ?という質問は、ザードと呼ばれた青年の、机を叩く音に遮られる。
「それで話があるんだよ」
机を叩いた勢いとは裏腹の、低い声で返すザード。
「……どういう事だ」
二人のやりとりに、静観を決め込んでいたと思われるロナードも顔を上げ、会話に参加する。
「どういうこともこういうことも、夕飯が作れねえんだよ」
「なんでだよ」
眉間に皺を寄せ、ザードを睨むハント。だが、ザードも負けてはいない。
もう料理をするつもりであったのか、ひらひらとしたエプロンをなびかせ、お玉で彼らを指した。
「台所のポポット食っただろ!」
「……ポポット…?」
首を傾げるハント、だがすぐに、ああ、と手を打った。
「そういやさっきロナードと一緒に焼きポポにして食っちまったな」
そう、言い終わるか終わらないかのうちに、お玉が彼の頬にクリーンヒットする。
「夕飯で使う予定だったんだよそれ、最後の奴だったのに!」
腰に手を当て、口をへの字の形にし、もうおれ作らないぞ、とそっぽを向くザード。
その、ザードの頭に何かが触れた。
それはロナードの手であった。
彼の手は、そのままザードの頭をわしわしと撫でる。
「食べてしまったのは悪かった。すまないが夕飯を作ってほしい、頼む」
頭を撫でられるという行動に、しばし驚きの表情を見せていたザードだったが、何かに納得をしたらしく、
「お、おう、じゃあ買い物行ってくるぜ」
と部屋を飛び出していった。
暫くロナードは彼を見送っていたが、踵を返すとそのまま席に着いた。
もう、既に机に伏せていたハントは、そんな彼の様子を眺めると、顔も上げず呟く。
おれも、ザードの飯は好きだけどな、と。
3人で9題のお題/From:シージェイズさん
- 作品名
- 04 緊急会議・議題は貴様と貴様(フラハイ圧縮)
- 登録日時
- 2009/04/12(日) 00:00
- 分類
- 文::ジャンルごちゃまぜ9題のお題