「凄いですよね」姜維が見つめる先にはひとりの青年。
「初めて会ったときは太陽が降ってきたのかと驚いたものだ」趙雲が頷く。
「なんの話をしてるんだ?」馬超が振り返り、二人の肩を抱き寄せる。
「孟起殿の鎧の話だ、凄いな、と言っていたのだ」
そう返したのは趙雲だった。
「涼州の錦という言葉がしっくりきますね、と子龍殿と話していたのです」姜維も微笑みながら頷く。
「ならば」
馬超は二人の肩を強く抱き寄せる。
「二人も着てみるといいだろ?」
「え」
趙雲、姜維、二人の声がきれいに重なる。
「子龍も伯約も体格そんなに変わらないからな」
「いやしかしそれでは孟起殿の誇りが…」
早速、両手の平をふり、必死に後退りを試みる姜維。
「気にするな、伯約達なら貸しても大丈夫だと思ってるからな」
その肩をがっしりと掴み、馬超は馬岱の名を呼ぶ。
「馬岱!鎧を持ってこーい!」
廊下まで響き渡るその叫び声に、姜維は向かいの趙雲を眺める。
――彼は、諦めたように微笑んでいた。
数刻後。
「孟起殿!」
劉備が目の前の青年を呼び止めた。
青年は振り返り、口を開いた。
「……殿、何か御用ですか?」
彼が見たのは、彼を見つめ、固まり、無言のまま立ち尽くす劉備の姿だった。
そう、馬超の鎧を着込んだ趙雲を見つめたままの。
「殿…。」
劉備の肩を軽く揺すり、彼は微笑んだ。
心の底、繰り返される反応に慣れた自らにうなだれながらも。
「…あ、ああ、子龍か」
「子龍です」
「そうか、では孔明殿と一緒に居られるのは」
「伯約殿です、犬猿の仲の二人が仲良くなる秘訣はありません」
劉備と会う前、出会う人々によって繰り返されたのだろう、質問に驚くぐらい淀みなく答えると趙雲は苦笑いした。
「しかし三人も居れば目に悪いな」
「目に悪いです」
大きな、二人分の溜め息。
…この後の戦いにおいて、馬超が増えたという報告があったとも、なかったとも言われている。
3人で9題のお題/From:シージェイズさん
- 作品名
- 05 目に優しくない奴ら(無双槍族)
- 登録日時
- 2009/05/03(日) 00:00
- 分類
- 文::ジャンルごちゃまぜ9題のお題