「同棲、しようぜ!」
その言葉に、真っ先に噛み付いたのは、ザードだった。
「こづくりしましょ、じゃねえんだからな」
負けじとなんだよ?と反論するハント。
「言葉の意味が解らない、ザード」
ロナードも割り込むが、すでに場は二人の戦場となっており、彼は返事が返ってこないのを確認すると、席に座った。
「そういう発言は禁止だっつってんだろ?全く空気も読めねえんだな」
「おいおっさん、お前にだけは言われたくねえぞ」
ごつん。頭と頭がぶつかった音を全く無かったように、ロナードは紅茶を口にし、僅かに眉をひそめた。
……先程ティーサーバーから淹れたばかりなのに、苦い。
カップとサーバーを手に無言で立ち上がったロナードを彼に気付いたらしき四つの視線がじりじりと矢を放つ。
きっと見えているなら、矢には救援を要請する密書が括りつけられているに違いない、そう思いながら彼は踵を返した。
「ロナードはどう思う!?」
それを待ち構えていたかのように、ふたつの声が、同じタイミングで同じ質問を繰り出す。
彼は、しばしティーサーバーと自らのティーカップを眺め、振り返る。
「同棲ではなく、居候だろう」
へ?と首を傾げる二人。彼は続けた。
「親族は皆帝都にいて部屋は余っている、住むなら勝手にしてくれて構わない」
そういうと、振り返っていた首を戻し、ロナードは付け足しのように呟く。
「仲間だからな」
「お、おう…あ、ありがとな!」
そのまま、万歳の格好で立ち上がるハントを尻目に、ザードはいいのかよ!と叫んだ。
だが、そんな彼の叫びは耳に入っていなかったのか、そのまま彼は台所の奥へと姿を消した。
数分後、満足げに紅茶を口にするロナードを眺め、ひょっとしたらそっちの方が重要な問題だったのでは、という疑念がわいたザードだったが、訊ねることも無いか、すぐにそう思い直すのだった。
――三人でも、まんざらでもないよな。
20090310-苦い紅茶>仲間との同居問題 つまり空気のような存在。
3人で9題のお題/From:シージェイズさん
- 作品名
- 07 オイみんなで同棲しようぜ(フラハイ圧縮)
- 登録日時
- 2009/03/10(火) 00:00
- 分類
- 文::ジャンルごちゃまぜ9題のお題