「写真?」
彼の言葉に、先に振り返ったのはバッドバッター。
……一拍の間を置いて、片割れも振り返り、二人は同時に首を傾げた。
まるで、示し合わせたかのように。
あまりにも、出来上がったかのような一連の流れに、一瞬、間が空くが、そこはそこ。
あくまで会話の範囲の僅かな間に抑えるように、バッターは応える。
「ああ、写真を一緒に――」
「おいクソアヒル」
片割れ、ゴーストバッターは隣のバッドバッターを見上げた。
「どうしたんだい?」
首のレバーを逆に押し入れながら、ゴーストバッターを見下ろす彼。
「あのバカ能面が何か言ってやがる、――写真だって?」
「よく聞こえてるじゃない」
くわっ、くわっ、と笑い声で応えながら彼はもう一人の方に歩み寄った。
「ねえバッター、写真って言った?」
「ああ、」
頷き、バッターはとある方向を指差した。
そこには、大きな箱のようなものを覗き込む、一人のエルセンがいた。
「写真家さん?」
そうらしい、という返事。
「俺達のことを撮ってくれるらしい」
「へえ」
彼はくわっ、とひと声笑うと、バッターの前を横切り、その、帽子を引っかけた奇妙ともいえる見た目のエルセンの隣に立つ。
「いいの?」
「ええ、折角だし、記念になりますよ。お時間はとらせませんよ、この写真機は――」
明らかに人の顔をしていない彼、バッドバッターにも怖じ気つくことなく、帽子のエルセンはにっこり笑うと写真機を撫で解説を始めた。
「何考えてやがる」
ふわっと流れる空気に気が付くか否か、バッターは自らに問いがかけられた事を理解した。
「何も」
「何もっつうことねえだろ、クソが」
彼の言葉に、本当に間髪入れず、余計なおまけ付きの言葉が返ってくる。
ならば、と口を開く。
ああ、出来れば言いたくはなかったが。
「……ザッカリー」
ため息ひとつ。察してしまったようだった。
少しばかりの沈黙の後、彼は言葉を口にした。
「そうは言ってもトイレに流せる程のクソみてえな時間はねえぞ」
そのまま、ふわっと浮き上がり、写真機の前に降り立った。
「すまない……」
残されたバッターは小さな声で呟き、懐から一枚の写真を取り出す。
――在りし日の思い出、ジェットコースターの上で、「亡き」友人と撮った写真を。
だが、感傷に浸る暇はないようだ――待ちくたびれたもう一人の自分が、放置されたごみ箱のような言葉で彼の背中を押しているからであった。
聞くに堪えない言葉の嵐に、彼は手を挙げ意思を示した。
――はい、チーズ。声が響いた。
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あのはしゃぐバッターさんいいですね!ええ!
- 作品名
- フォトグラフィ(Continue/stop/Rise-ザッカリーを懐かしむバッター)
- 登録日時
- 2016/11/08(火) 02:26
- 分類
- 文::フリゲ